前回、当社の使命に掲げる、「良質な賃貸不動産の提供」についてご紹介しましたが、賃貸住宅を例にとって、もう少しご説明したいと思います。

 一般的な考えとして、ハード面では、建物、仕様、設備の品質が平均レベルよりも高いこと、ソフト面では、賃料が平均より少なくとも高くは無く、建物や設備のメンテナンスがきちんと行われ、何か不具合があれば迅速に対応してもらえる、といったところでしょうか。

  これらに加え、決定的な要素として、交通の便がよく、生活に欠かせない各種施設が近くにあり、周辺環境からも住みやすい場所に立地していることが重要です。

 当社が管理運営している賃貸住宅は、これら全ての面で平均レベルを上回ることを目指していますが、項目によっては平均程度のレベルという物件もあります。築年数が経つにつれ、設備などは機能的には問題が無くとも、古さを感じることが否めないものもあります。

 そのような場合は、部分的な、あるいは全面的なリノベーションを行い、設備を更新するだけでなく、部屋の間取り変更も含めた大胆な改装により、築浅の物件に劣らない住み心地の住宅に再生を図ります。良質な賃貸住宅とは、お客様にとって住みやすいことが絶対基準であると考えているからです。

 この基準に照らして世に多くある賃貸住宅を見渡して見ると、あるいびつな状況に気付きます。それは、ワンルームマンションなど単身者向けの賃貸住宅については、供給量も豊富であり、最新の設備を備えた住宅も次々と建設されている反面、いわゆるファミリー向けの賃貸住宅については、多様な需要に比べると供給が多くはなく、しかもお客様に妥協を強いるような品質の物件が今なお多いということです。

 理由として真っ先に考えられることは、投資効率からすると、単身者向け賃貸住宅の方が、面積当たり賃料が高く、延べ床面積が同じならば水周りなどの設備費用が多くかかることを差し引いたとしても、事業者サイドからするとファミリー向け賃貸住宅を取得するよりも利益が上がると考えられることが挙げられます。

 これに加えて、これは事業者の怠慢ですが、建設コストを抑えるために、建物の基本的な品質の部分を最低限の水準に抑えてしまい、その結果、騒音などの点で入居者が我慢せざるを得ないことになり、一般的な賃貸住宅の評価が上がらなかったという事実があります。

 これらの結果として、多くの賃貸住宅はお客様=入居者を失い続け、周囲が大いに気になる国民性とも相まって、分譲住宅へとお客様が流れていくことを指をくわえて見てきた、というのが私が賃貸不動産業界を観察して知り得た問題点の1つです。

 当社では、以上のような問題意識を持ち、お客様に長く住んでいただくために何が必要か、という視点で賃貸住宅の品質向上に日々取り組んでいます。